週4日しか営業せず、しかも 11:00~14:00 の 3時間しかオープンしていないラーメン屋がある。単に「食べにくいラーメン屋じゃないか」と思うかもしれないが、そのラーメンには心に染みいる旨味があり、会社の有休をとってまで食べたいという人たちが全国から集まる。
・モダンながら丁寧に仕上げられた逸品
そのラーメン屋の名は『十八番』(じゅうはちばん)。定番の醤油ラーメンのような雰囲気を醸していながら、実は「古さ」と「新しさ」に介在して「奇抜さ」が存在する、モダンながら丁寧に仕上げられた逸品。実際に食べてみた。
・麺を卸している鍋谷製麺所
開店時間は11:00だが、玄関が開いていれば入って着席していてよい。だいたい10:30には玄関が開いている。勝手に入るのは気がひける? ならば毎日『十八番』に麺を卸している鍋谷製麺所のオッチャンがそのころ納品しにくるので、一緒に入るといい。
・何万杯も作られてきたラーメンの薫り
民家がそのまま食堂になったかのような店内。そのふしぶしから放たれる「食べてもいないのに美味しさを感じさせるオーラ」は、何万杯も作られてきたラーメンの薫りが年季として染み込んだものだろう。厨房から漂うダシの旨味を乗せた気流が、そのオーラをさらに重厚なものとする。
・注文時に名前を言う必要あり?
『十八番』のラーメンには醤油、味噌、塩がある。サイズは並、中、大。なかでも人気メニューは醤油ラーメン。この日は、おばちゃんふたりがじっくりと丁寧に作っていた。注文時に名前を言う必要があり、もし佐藤さんが注文する場合は「並の醤油ラーメン佐藤です」と言う。誰が注文したラーメンかオバチャンが理解するためだ。混んでないときは名前を言わずともラーメンは出てくるが、混雑時は名前を伝えて混乱を防ぎたいところ。
・そのすべてが食欲につながる要素
目の前に出された醤油ラーメンは、アクセントとしてレモンが光る。しかしそれ以上に感動したのが、視覚として食欲をそそらせる要素が満載な点。大きくも極薄にスライスされたネギ、スープをジワッと染み込ませ縮みゆく海苔、そして田沢湖の湖底で眠る龍のごとく、にごりの奥底に沈む麺。そのすべてが食欲につながる要素だ。
・濃縮されたスープは「濃縮されても繊細」
スープが奏でるのは「鶏の極み」。極上の焼鳥を出す店は総じて鶏皮が絶品だ。それは鶏油の味。旨味は鶏肉の質にもよるが、それと同じくらい「旨味を引き出すスキル」が必要だ。『十八番』の醤油ラーメンにはそれがある。旨味がギュッと濃縮されたスープは「濃縮されても繊細」なので、決して「味としての強さ」にはならない。いつまでもいつまでも、ジンワリと旨味が続くのだ。
・麺にも秘密があると感じた
丼には薄い油膜が張っている。麺をサルベージすると、嫌でも大量の油が麺をヴェールに包む。それでも味の濃さや油っぽさを感じさせないのは、麺にも秘密があると感じた。特別に強いコシがあるわけではなく、細さもよくあるサイズ。それなのに他店にはない味がある。
・内部に秘められていた小麦の旨味
この麺はかんだときだけ、いままでスープに触れていなかった麺の中心部がスープを急激に吸収する。その瞬間、内部に秘められていた小麦の旨味が広がり、さらに優しい味、深い味になるのだろう。事実、かんだ瞬間にスープの旨味が急激に変化する。その味の変化スピードは他店ではあまり見られないもの。
・爽やかさだけがスープに残る
アクセントとして入っているレモンだが、その食べ方は自由。筆者(私)のオススメの食べ方だが、ラーメンを 1/3 ほど食べたらレモンをレンゲにのせて箸でつぶし、溢れ出た果汁をスープに開放する。鋭い味になることはなく、スープがレモンのトゲの部分だけを中和し、爽やかさだけがスープに残る。これがまた絶品で、最後の一滴までスープを飲んでしまう。
・ヤミツキになるのも理解できる
強いインパクトのあるラーメンではないが、このジワッとくる旨味、ヤミツキになるのも理解できる。最後に、撮影を快諾してくれ、優しく丁寧に接客してくれたおばちゃんに感謝したい。その人柄が、遠方からでも「また食べに行きたい」と思わせる魅力のひとつなのは間違いない。
・今回ご紹介した飲食店の詳細データ
店名 十八番
住所 秋田県能代市追分町2-50
時間 11:00~14:00
休日 水土日 / 祝日 / 年末年始 / 盆
※クルマできた人はちゃんと駐車場に停車しないとラーメンを提供してもらえない
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